電験三種の誘導機|すべり・トルク・始動方法を例題で整理

電験三種の誘導機を、すべり・トルク・始動方法の要点で紹介する記事のアイキャッチ

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誘導機の問題で、『すべりの式は覚えたのに、トルクや出力が出てくると手が止まる』と感じている方も多いですよね。

結論から言うと、電験三種の誘導機は「すべり」と「二次入力:二次銅損:出力 = 1:s:(1 − s)」の2つを軸にすると、計算問題のほとんどがつながります。

この記事を読むと、すべりの意味、トルクの考え方、始動方法の違いと、計算問題の解き方の流れが分かります。

目次

電験三種の誘導機は何を覚える?

先に結論

誘導機は機械科目の四機の1つです。回転磁界より少し遅れて回る、という仕組みを押さえ、すべり・電力の比・トルク・始動・速度制御の順に覚えると整理しやすくなります。

『誘導機って、なぜ「誘導」なの?』と気になった方もいますよね。

固定子の三相の巻線に電流を流すと、回転する磁界ができます。この磁界が回転子の導体を横切ると、電磁誘導で電流が流れ、その電流と磁界の力で回転子が回ります。

電磁誘導やフレミングの法則があいまいな方は、電験三種の電磁気で先に確かめておくと読みやすくなります。

すべりの意味と式

回転子は、回転磁界と同じ速さでは回れません。同じ速さだと導体が磁界を横切らなくなり、電流が流れなくなるからです。

この「回転磁界からどれだけ遅れているか」の割合がすべりです。式は次のとおりです。

項目式意味
同期速度Ns = 120f ÷ p回転磁界の速さ(min⁻¹)
すべりs =(Ns − N)÷ Ns回転磁界からの遅れの割合
回転速度N = Ns(1 − s)すべりから回転速度を出す
二次周波数f2 = sf回転子に流れる電流の周波数

例えば4極・50Hzなら、同期速度は 120 × 50 ÷ 4 で1,500min⁻¹です。すべりが0.04なら、回転速度は 1,500 × 0.96 で1,440min⁻¹になります。

このとき回転子に流れる電流の周波数は、0.04 × 50 で2Hzです。止まっている時(s = 1)は電源と同じ50Hzで、回り始めると下がっていく、と覚えておきましょう。

かご形と巻線形の違い

誘導電動機は、回転子の作りで2つに分かれます。どちらの話かで使える始動方法が変わるので、最初に区別しておきましょう。

比べる点かご形巻線形
回転子の作り導体の棒を端で短絡した、かごのような形三相の巻線をスリップリングで外に出す
外から抵抗をつなげるかつなげないつなげる
作り簡単で丈夫複雑で保守が要る
主な始動方法Y-Δ始動・始動補償器・インバータ二次抵抗始動

等価回路は変圧器とほとんど同じ

誘導機の等価回路は、変圧器の等価回路の二次側の抵抗を r2 ÷ s に置き換えた形です。

この r2 ÷ s は、r2(二次銅損のもと)と r2(1 − s)÷ s(機械的出力のもと)の2つに分けられます。『等価回路の負荷抵抗って何?』と迷ったら、この r2(1 − s)÷ s のことだと思い出してください。

電力の流れとトルクの型

二次入力:二次銅損:出力 = 1:s:(1 − s)

固定子から回転子に渡る電力(二次入力)は、すべりの割合だけ二次銅損になり、残りが機械的な出力になります。この比が誘導機の計算の中心です。

『誘導機の電力の計算は、どこから手をつければいいの?』と迷いますよね。

実は、二次入力さえ分かれば、二次銅損と出力は比で一気に出せるんです。

電力比式
二次入力 P21固定子から回転子に渡る電力
二次銅損 Pc2sPc2 = sP2
機械的出力 P01 − sP0 =(1 − s)P2
誘導機の電力の流れを、一次入力から一次側の損失を引いた二次入力が、すべりの割合で二次銅損と機械的出力に分かれる様子で示した図解

例題:出力とトルクを出す

自作の例題で、電力の比とトルクの出し方を確かめます。

『4極・50Hzの三相誘導電動機で、二次入力10kW、すべり0.04の時、二次銅損・出力・トルクは?』

例題の解き方
  1. 二次銅損:0.04 × 10 = 0.4kW
  2. 出力:(1 − 0.04)× 10 = 9.6kW
  3. 同期速度:120 × 50 ÷ 4 = 1,500min⁻¹
  4. 同期角速度:2π × 1,500 ÷ 60 で約157rad/s
  5. トルク:二次入力 ÷ 同期角速度 = 10,000 ÷ 157 で約63.7N・m

トルクは「出力 ÷ 回転子の角速度」でも「二次入力 ÷ 同期角速度」でも同じ値になります。9,600 ÷(2π × 1,440 ÷ 60)を計算しても約63.7N・mです。

二次入力を使うと計算が速い

二次入力をそのまま同期角速度で割ると、すべりを使わずにトルクが出ます。このためトルクのことを「同期ワット」で表すこともあります。

トルクの比例推移

巻線形誘導電動機では、回転子の回路に外から抵抗をつなげます。二次抵抗をm倍にすると、同じトルクが出るすべりもm倍になります。これを比例推移と呼びます。

例えば、全負荷のトルクがすべり0.03で出ていた電動機の二次抵抗を3倍にすると、同じトルクはすべり0.09で出ます。最大トルクの大きさは変わらず、出るすべりの位置だけが動く、と覚えておきましょう。

始動方法を比べる

始動の目的は「始動電流を抑える」こと

誘導電動機は、そのまま電源につなぐと大きな始動電流が流れます。電流を抑える方法ごとに、始動トルクがどうなるかをセットで覚えます。

『始動方法の名前は覚えても、特徴が混ざってしまう』という方は多いですよね。

主な始動方法を表で比べます。

始動方法使う電動機仕組み始動電流・始動トルク
全電圧始動(直入れ)かご形(小容量)そのまま電源につなぐ電流が大きい
Y-Δ始動かご形始動はY結線、加速したらΔ結線に切り替える電流もトルクもΔの時の3分の1
始動補償器かご形単巻変圧器で電圧を下げて始動する電圧を下げた分、電流もトルクも減る
リアクトル始動かご形リアクトルで電圧を下げて始動する電流の減り方に比べてトルクが大きく減る
二次抵抗始動巻線形回転子に抵抗を入れて始動する電流を抑えつつ大きなトルクを出せる
インバータ始動かご形周波数と電圧を下げて始動する電流を抑えて滑らかに加速できる

二次抵抗始動は、比例推移を使った方法です。二次抵抗を大きくすると、最大トルクが出るすべりが1(停止の状態)に近づくので、大きな始動トルクを得られます。

誘導電動機の始動方法を、始動電流を抑える仕組みと始動トルクの変わり方で比べた図解
よくある取り違え

Y-Δ始動の「3分の1」を、電圧の比と取り違える方がいます。電圧は√3分の1ですが、線電流と始動トルクは3分の1です。次の相談2で理由を見ていきます。

速度制御の方法

回転速度を変える方法も、N = 120f(1 − s)÷ p の式から整理できます。

速度制御の方法と式の対応
  • 極数pを変える:極数変換(段階的に変わる)
  • 周波数fを変える:インバータによる周波数制御
  • すべりsを変える:二次抵抗制御(巻線形)や一次電圧制御

周波数を変える時は、電圧も一緒に変えて V/f を一定に保ちます。周波数だけ下げると磁束が増えすぎて、鉄心が飽和してしまうからです。

計算問題の型と解く手順

問題文の言葉で、使う型を先に決める

誘導機の計算問題は、問題文の言葉を見ればどの型を使うかがほぼ決まります。最初の一手を表にしておきます。

『式は覚えたのに、どれを使えばいいか迷う』という時は、次の表で照らし合わせてみてください。

問題文の言葉使う型最初の一手
回転速度、極数、周波数同期速度とすべりの型Ns = 120f ÷ p を出す
二次銅損、出力、二次入力電力の比の型1:s:(1 − s)に当てはめる
トルクトルクの型二次入力 ÷ 同期角速度
二次抵抗を変えた、外部抵抗比例推移の型すべりを抵抗と同じ倍率にする
始動電流、始動トルク始動の型電圧の比と、トルクは電圧の2乗

例題2:比例推移で外部抵抗を出す

『巻線形誘導電動機の二次巻線の抵抗が1相0.1Ω。全負荷トルクがすべり0.04で出ている。同じトルクをすべり0.2で出すには、1相にいくらの抵抗を外からつなぐ?』

例題2の解き方
  1. すべりの倍率:0.2 ÷ 0.04 = 5倍
  2. 二次回路の抵抗も5倍にする:0.1 × 5 = 0.5Ω
  3. 外からつなぐ抵抗:0.5 − 0.1 = 0.4Ω

答えは0.4Ωです。手順2で出した0.5Ωをそのまま答えにしてしまう失敗が多いので、「全体から元の抵抗を引く」ところまで忘れずに進めましょう。

例題3:電圧を下げた時の始動トルク

『全電圧で始動すると始動トルクが定格トルクの1.8倍になる電動機を、始動補償器で電圧を70%に下げて始動した。始動トルクは定格の何倍?』

トルクは電圧の2乗に比例するので、1.8 × 0.7² = 1.8 × 0.49 で約0.88倍です。定格トルクより小さくなるので、重い負荷だと始動できないことがある、と読めますね。

誘導機の計算の見直しチェック
  • 同期速度と回転速度を取り違えていないか
  • トルクを出す時、二次入力には同期角速度、出力には回転子の角速度を使ったか
  • min⁻¹ を rad/s に直す時、2π を掛けて60で割ったか
  • 比例推移で、外からつなぐ抵抗は全体から元の抵抗を引いたか

電験ガイド

独学で進めるか、講座を使うか迷っている方へ

電験三種は4科目の範囲が広く、理論や機械の計算でつまずく人も少なくありません。通信・Web動画・DVD・通学など講座の学び方の違いと、比べる時のチェックポイント、資料請求で確かめたい点をまとめました。

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誘導機についてよくある相談

相談が多いのは「すべりの単位」「Y-Δ始動」「出題のパターン」

知恵袋でも、電験三種の誘導機についての相談がたくさん寄せられています。よくあるものを選んで答えます。

相談1:すべりには、なぜ単位がないの?

すべりsに単位がないのはなぜか、s = 5 のような値になったらどう読むのか、という相談があります。

すべりは、速度の差を同期速度で割った「割合」なので単位がありません。%で表すこともあり、0.04なら4%です。

『じゃあ、5になることはあるの?』と思いますよね。電動機として回っている時は0から1の間です。1は止まっている状態、マイナスは発電機として回っている状態で、1を超えるのは回転磁界と逆向きに回されている(制動の)状態です。

相談2:Y-Δ始動で、線電流と相電流の減り方が違うのはなぜ?

Y-Δ始動で、線電流は3分の1になるのに、巻線の相電流は√3分の1と書かれていて混乱した、という相談もあります。

Y結線にすると、1相の巻線にかかる電圧がΔ結線の√3分の1になります。そのため巻線に流れる相電流も√3分の1です。

一方、Δ結線の線電流は相電流の√3倍ですが、Y結線では線電流と相電流が同じです。これを合わせると、線電流は √3分の1 × √3分の1 で3分の1になります。トルクは電圧の2乗に比例するので、こちらも3分の1です。

相談3:誘導機は、同じパターンの問題しか出ない?

誘導機は同じパターンの問題しか出ないと聞いたが本当か、という相談もあります。

出題の傾向を言い切ることはできません。ただ、計算問題の多くは、すべり・電力の比・トルク・比例推移の組み合わせでできています。

型を覚えたうえで、問題文の言葉からどの型を使うかを判断する練習をしておくと、見たことのない形にも対応しやすくなります。上の「計算問題の型」の表を使ってみてください。

相談押さえる考え方
すべりの単位割合なので単位がない。電動機では0から1の間
Y-Δ始動の電流相電流は√3分の1、線電流は3分の1
同じパターンしか出ないか型を覚えたうえで、言葉から型を選ぶ練習をする

変圧器の等価回路を先に押さえておくと、誘導機の等価回路も読みやすくなります。くわしくは電験三種の変圧器で紹介しています。

よくある質問

電験三種の誘導機で、最初に覚える式は何ですか?

同期速度 Ns = 120f ÷ p と、すべり s =(Ns − N)÷ Ns です。この2つから回転速度が出せ、電力の比やトルクの計算につながります。

二次入力・二次銅損・出力の関係は?

1:s:(1 − s)の比になります。二次入力が分かれば、二次銅損はすべりを掛けて、出力は(1 − s)を掛けて出せます。

Y-Δ始動で、始動電流と始動トルクはどうなりますか?

Δ結線のまま始動した時と比べて、線電流も始動トルクも3分の1になります。巻線にかかる電圧は√3分の1です。

かご形と巻線形は、何が違いますか?

回転子の作りが違います。かご形は導体の棒を短絡した簡単で丈夫な作りで、巻線形は回転子の巻線をスリップリングで外に出し、外から抵抗をつなげます。比例推移や二次抵抗始動が使えるのは巻線形です。

比例推移とは何ですか?

巻線形誘導電動機で二次抵抗をm倍にすると、同じトルクが出るすべりもm倍になる性質です。最大トルクの大きさは変わりません。

まとめ

この記事の要点
  • 誘導機は回転磁界より少し遅れて回り、その遅れの割合がすべり
  • 二次入力:二次銅損:出力 = 1:s:(1 − s)が計算の中心
  • トルクは二次入力を同期角速度で割ると速く出せる
  • 二次抵抗をm倍にすると、同じトルクのすべりもm倍(比例推移)
  • Y-Δ始動は、線電流も始動トルクもΔの時の3分の1

同期速度で回る機械は電験三種の同期機、機械科目全体の進め方は電験三種の機械で紹介しています。

電験ガイド

電験ガイド 編集部

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