当サイトの記事は、編集部が電気技術者試験センター・経済産業省などの公的機関と、各講座・出版社の公式サイトの公開情報を調べて独自に執筆しています。試験の日程・受験手数料・合格基準は年度ごとに変わるため、最新の情報は電気技術者試験センターの受験案内で確認してください。
同期機の章に入って、『ベクトル図や短絡比が出てきて、急に難しくなった』と感じている方も多いですよね。
結論から言うと、電験三種の同期機は「同期速度で回る」「起電力と端子電圧の差を同期リアクタンスが受け持つ」の2つを軸にすると、発電機も電動機も同じ考え方で読めます。
この記事を読むと、同期発電機と同期電動機の違い、短絡比と並行運転の条件、V曲線の読み方が分かります。
電験三種の同期機は何を覚える?
同期機は機械科目の四機の1つで、電源の周波数で決まる同期速度ぴったりで回る機械です。発電所の発電機の多くは同期発電機なので、電力科目の発電の話ともつながります。
『誘導機と同期機、名前は似ているけど何が違うの?』と思いますよね。
誘導機は回転磁界より少し遅れて回りますが、同期機は回転磁界と同じ速さで回ります。回転子に直流の界磁電流を流して、磁石のように働かせているからです。
同期速度の式
同期速度は、誘導機と同じ式で求めます。
| 項目 | 式・中身 |
|---|---|
| 同期速度 | Ns = 120f ÷ p(min⁻¹) |
| 例:2極・50Hz | 120 × 50 ÷ 2 = 3,000min⁻¹ |
| 例:4極・60Hz | 120 × 60 ÷ 4 = 1,800min⁻¹ |
| 例:12極・50Hz | 120 × 50 ÷ 12 = 500min⁻¹ |
例えば、高速で回る蒸気タービンには極数の少ない発電機を、ゆっくり回る水車には極数の多い発電機を組み合わせます。極数と回転速度の関係が、そのまま発電機の形の違いになっているんです。
| 比べる点 | タービン発電機 | 水車発電機 |
|---|---|---|
| 回転子の形 | 円筒形 | 突極形 |
| 極数 | 少ない | 多い |
| 回転速度 | 速い | 遅い |
| 形 | 細長い | 直径が大きい |
発電所ごとの特徴は電験三種の発電で紹介しています。
同期発電機と同期電動機の違い
同期機は、同じ作りで発電機にも電動機にもなります。内部の起電力Eと端子電圧Vの位相の差(負荷角δ)で、どちらとして働いているかが分かります。
『発電機と電動機で、覚えることが倍になるの?』と不安になるかもしれません。
実は、共通の部分が多いので、違う所だけ押さえれば大丈夫です。
| 比べる点 | 同期発電機 | 同期電動機 |
|---|---|---|
| 働き | 回されて電気を出す | 電気を受けて回る |
| 起電力Eと端子電圧Vの位相 | Eが進む | Eが遅れる |
| 回転速度 | 同期速度 | 同期速度(負荷が変わっても一定) |
| 力率 | 負荷で決まる | 界磁電流で調整できる |
| 始動 | 原動機で回す | そのままでは始動トルクがない |
| 主な使われ方 | 発電所の発電機 | 一定の速度で回す大型の機械、同期調相機 |

出力の式と起電力の求め方
同期機の1相の出力は、P = VEsinδ ÷ Xs で表せます(電機子の抵抗を無視した円筒形の場合)。三相ならこれを3倍します。
自作の例題で、起電力の求め方を確かめます。『1相の端子電圧3,800V、同期リアクタンス5Ω、電機子電流300A、力率1の時の1相の起電力は?』
- 同期リアクタンスでの電圧降下:5 × 300 = 1,500V
- 力率1なので、Vと電圧降下は直角になる
- 三平方の定理:E = √(3,800² + 1,500²)
- 計算する:√16,690,000 で約4,085V
力率1の時は、端子電圧と同期リアクタンスの電圧降下が直角になるので、三平方の定理で解けます。遅れ力率の時は、ベクトル図を描いてcosθとsinθに分けてから同じように計算しましょう。
電機子反作用
電機子電流が作る磁束が、界磁の磁束に影響することを電機子反作用と呼びます。発電機では、電流の位相で影響が変わります。
- 電流が電圧と同相:交さ磁化作用(磁束がかたよる)
- 電流が遅れ:減磁作用(磁束を弱める)
- 電流が進み:増磁作用(磁束を強める)
同期電動機では、遅れと進みの関係が逆になります。発電機の3行を先に覚え、電動機は「逆」とだけ覚えておくと混ざりません。
短絡比と並行運転の条件
短絡比は、同期インピーダンスの大きさの目安です。並行運転の条件は、2台の発電機の電圧が「大きさ・位相・周波数・波形」でそろっているかを見ます。
『短絡比って、大きい方がいいの?小さい方がいいの?』と迷いますよね。
短絡比は、無負荷で定格電圧を出す時の界磁電流を、三相短絡で定格電流を流す時の界磁電流で割った値です。百分率同期インピーダンスとの間には、短絡比 = 100 ÷ 百分率同期インピーダンス の関係があります。
| 比べる点 | 短絡比が大きい | 短絡比が小さい |
|---|---|---|
| 同期インピーダンス | 小さい | 大きい |
| 電圧変動率 | 小さい | 大きい |
| 安定度 | 高い | 低い |
| 機械の大きさ | 大きく重い(鉄機械) | 小さく軽い(銅機械) |
| 主な発電機 | 水車発電機 | タービン発電機 |
例えば、百分率同期インピーダンスが80%なら、短絡比は 100 ÷ 80 で1.25です。
並行運転の条件
2台以上の同期発電機をつないで運転する時は、次の条件をそろえます。
| 条件 | そろっていないと起きること |
|---|---|
| 起電力の大きさが等しい | 無効横流(無効循環電流)が流れる |
| 起電力の位相が等しい | 有効横流(同期化電流)が流れる |
| 周波数が等しい | 位相のずれが続き、乱調などの原因になる |
| 波形が等しい | 高調波の横流が流れる |
三相の場合は、相回転(相の並ぶ順)も同じであることが前提です。並行に入れる瞬間に位相と周波数がそろったかは、同期検定器で確かめます。
V曲線の読み方
同期電動機の負荷を一定にして界磁電流を変えると、電機子電流はV字の曲線を描きます。いちばん電流が小さい底が力率1の点です。
『V曲線のグラフは、どこを見ればいいの?』という声もよく聞きます。
横軸が界磁電流、縦軸が電機子電流です。界磁電流を変えると、同じ負荷でも電機子電流の大きさと力率が変わります。
| 界磁電流 | 状態 | 電機子電流の力率 |
|---|---|---|
| 少ない(Vの左側) | 不足励磁 | 遅れ |
| ちょうど(Vの底) | 力率1 | 1 |
| 多い(Vの右側) | 過励磁 | 進み |

負荷を大きくすると、V曲線は全体に上へ移ります。底どうしを結んだ線が「力率1の線」です。
この性質を使って、無負荷の同期電動機を過励磁で回し、コンデンサのように進み電流をとらせるのが同期調相機です。
例えば、遅れ力率の誘導電動機がたくさん動いている工場で、大きな同期電動機を少し過励磁で回すと、工場全体の力率を良くする手助けになります。回すことと力率の改善を1台でこなせるのが、同期電動機の強みなんです。
過励磁で「遅れ」と覚えてしまう方がいます。同期電動機は、過励磁で進み電流、不足励磁で遅れ電流です。同期発電機の電機子反作用と関係が逆になるので、図で確かめておきましょう。
同期電動機の始動方法
同期電動機は、そのままでは始動トルクがありません。回転磁界の速さに回転子がついていけないからです。
主な始動方法は、制動巻線を使って誘導電動機として始動させる自己始動法、別の電動機で同期速度近くまで回す始動電動機法、低い周波数から上げていく方法です。制動巻線は、乱調(速度の揺れ)を抑える役目もあります。
電験ガイド
独学で進めるか、講座を使うか迷っている方へ
電験三種は4科目の範囲が広く、理論や機械の計算でつまずく人も少なくありません。通信・Web動画・DVD・通学など講座の学び方の違いと、比べる時のチェックポイント、資料請求で確かめたい点をまとめました。
講座の選び方電験三種の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。試験の日程・受験手数料は電気技術者試験センターの案内で最新情報を確認してください。
計算問題の型と解く手順
問題文の言葉を見れば、どの型を使うかがほぼ決まります。型ごとに最初の一手を決めておくと、ベクトル図の問題でも手が止まりにくくなります。
『同期機の計算は、どこから手をつければいいか分からない』という方も多いはずです。次の表で問題文の言葉を照らし合わせてみてください。
| 問題文の言葉 | 使う型 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 極数、周波数、回転速度 | 速度の型 | Ns = 120f ÷ p |
| 誘導起電力、同期リアクタンス、力率 | 起電力の型 | Vを基準にベクトル図を描く |
| 出力、負荷角 | 出力の型 | P = 3VEsinδ ÷ Xs(1相の値を使う) |
| 短絡比、百分率同期インピーダンス | 短絡比の型 | 短絡比 = 100 ÷ 百分率同期インピーダンス |
| 無負荷飽和曲線、三相短絡曲線 | 短絡比の型 | 2つの界磁電流の比を出す |
例題:出力と負荷角
『1相の端子電圧3,800V、1相の起電力4,000V、同期リアクタンス10Ωの三相同期発電機が、負荷角30度で運転している。三相の出力は?』
- 1相の出力の式:P1 = VEsinδ ÷ Xs
- 代入する:3,800 × 4,000 × 0.5 ÷ 10 = 760,000W
- 三相にする:760,000 × 3 = 2,280,000W(2,280kW)
sin30度は0.5です。負荷角δが90度の時にsinδが1になり、理論上の最大の出力になる、と一緒に覚えておきましょう。
2つの曲線から短絡比を出す
無負荷飽和曲線は、無負荷の時の界磁電流と端子電圧の関係です。三相短絡曲線は、短絡した時の界磁電流と電機子電流の関係です。
例えば、無負荷で定格電圧を出す界磁電流が200A、短絡で定格電流を流す界磁電流が160Aなら、短絡比は 200 ÷ 160 で1.25です(自作の例)。
- 線間電圧と相電圧を取り違えていないか
- 出力の式に1相の値を入れ、最後に3倍したか
- 力率角θと負荷角δを取り違えていないか
- 短絡比の分子と分母を逆にしていないか
同期機についてよくある相談
知恵袋でも、電験三種の同期機についての相談がたくさん寄せられています。よくあるものを選んで答えます。
相談1:力率角θは、どの電圧と電流の間の角?
同期発電機の力率cosθのθは、端子電圧と電流の間なのか、起電力と電流の間なのか、という相談があります。
力率角θは、端子電圧Vと電機子電流Iの間の角です。起電力Eと端子電圧Vの間の角は負荷角δと呼び、別のものです。
『θとδが混ざってしまう』という方は、ベクトル図にVを基準に描き、θとδを違う色で書き込んでみてください。
相談2:同期インピーダンスの式の√3はどこから来るの?
同期インピーダンスを Zs = Vn ÷(√3Is)で求める式の意味が分からない、という相談もあります。
Vnは定格の線間電圧、Isは三相短絡した時の電流です。同期インピーダンスは1相分の値なので、線間電圧を√3で割って相電圧に直してから、電流で割っているんです。
例えば、定格電圧6,600Vの発電機で、三相短絡電流が500Aなら、6,600 ÷(√3 × 500)で約7.6Ωです(自作の例)。1相の値を出しているんだ、と意識するだけで√3の付け忘れが減ります。
相談3:短絡比が1より小さいのは、おかしくない?
教科書で短絡比が1未満の発電機を見たことがあるが、1より大きいこともあるのか、という相談もあります。
短絡比は1より小さいことも大きいこともあります。タービン発電機は小さめ、水車発電機は大きめになる傾向がある、と覚えておけば選択肢の判断に困りません。
| 相談 | 押さえる考え方 |
|---|---|
| 力率角θはどこの角か | 端子電圧Vと電機子電流Iの間。EとVの間は負荷角δ |
| 同期インピーダンスの√3 | 線間電圧を相電圧に直している |
| 短絡比が1未満でもいいか | 1より小さいことも大きいこともある |
誘導機との違いを確かめたい方は電験三種の誘導機、機械科目全体の進め方は電験三種の機械で紹介しています。
よくある質問
電験三種の同期機で、最初に覚えることは何ですか?
同期速度 Ns = 120f ÷ p と、起電力・端子電圧・同期リアクタンスの関係です。この2つが分かれば、発電機と電動機のどちらの問題にも入れます。
短絡比が大きいと、どうなりますか?
同期インピーダンスが小さくなり、電圧変動率が小さく、安定度が高くなります。その代わり、機械は大きく重くなります。
V曲線で、力率1になるのはどこですか?
V字の底、つまり電機子電流がいちばん小さくなる点です。左側は不足励磁で遅れ、右側は過励磁で進みになります。
同期電動機はなぜ自分で始動できないのですか?
回転磁界の速さに、止まっている回転子がついていけないからです。制動巻線で誘導電動機として始動させる方法や、別の電動機で同期速度の近くまで回す方法を使います。
同期発電機の並行運転の条件は何ですか?
起電力の大きさ・位相・周波数・波形が等しいことです。三相の場合は相回転が同じことも前提になります。
まとめ
- 同期機は Ns = 120f ÷ p の同期速度で回り、発電機にも電動機にもなる
- 起電力Eが端子電圧Vより進めば発電機、遅れれば電動機
- 短絡比 = 100 ÷ 百分率同期インピーダンスで、大きいほど電圧が安定し機械は大きい
- 並行運転は、起電力の大きさ・位相・周波数・波形をそろえる
- V曲線の底は力率1、左は遅れ、右は進み





コメント