電験三種の電子理論|半導体・トランジスタ・電子の運動

電験三種の電子理論を、半導体・トランジスタ・電子の運動の考え方で紹介する記事のアイキャッチ

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電験三種の理論の中でも、電子理論は『トランジスタや半導体なんて、仕事で触ったこともない』と苦手に感じる方が多いですよね。

結論から言うと、電験三種の電子理論は「素子ごとの役割」と「電子の運動の問題の型」の2つに分けて覚えると、ぐっと取り組みやすくなります。

この記事を読むと、半導体と素子の役割、電子の運動の解き方、機械の科目のパワーエレクトロニクスとのつながりがつかめます。

目次

電子理論で出てくる素子の役割を表で見る

先に結論

電子理論でよく出てくる素子は、ダイオード・トランジスタ・FET・オペアンプの4つです。「何を流して、何を操るか」を素子ごとに言えるようにしておくと、論説の問題で迷いにくくなります。

『部品の名前ばかりで、何から覚えればいいか分からない』という方も多いはずです。

まずは、素子の役割を1枚の表にまとめます。

素子主な役割何で操るか覚えておきたい性質
ダイオード電流を一方向にだけ流すかかる電圧の向き順方向は流れ、逆方向はほぼ流れない
トランジスタ(バイポーラ)小さな電流で大きな電流を操るベース電流IE = IB + IC、増幅率 hFE = IC ÷ IB
FET(電界効果トランジスタ)電圧で電流を操るゲート電圧入力のインピーダンスがとても高い
オペアンプ電圧を増幅する2つの入力の電圧の差外につなぐ抵抗で増幅度が決まる

試験センターが公表している理論の科目の範囲には、電気理論とならんで電子理論、電気計測及び電子計測が入っています。電子理論は、理論の科目の中で欠かせない一部なんです。

トランジスタとFETの違いをひとことで

トランジスタは「電流で電流を操る」素子で、FETは「電圧で電流を操る」素子です。

FETはゲートにほとんど電流が流れないので、入力のインピーダンスが高くなります。この違いは論説の問題でよく問われる所なので、表の言葉で言えるようにしておきましょう。

半導体の基本:n形とp形を見分ける

n形は電子、p形は正孔が主役

シリコンなどの真性半導体に、5価の原子を少し混ぜるとn形、3価の原子を混ぜるとp形になります。多く動き回る電荷(多数キャリア)が、n形は電子、p形は正孔です。

『正孔って、穴なのに電気を運ぶの?』と不思議に感じますよね。

正孔は、電子が抜けたあとのすき間です。となりの電子が次々にすき間を埋めていくので、すき間そのものが正の電荷のように動いて見えるんです。

比べるところn形半導体p形半導体
混ぜる不純物5価の原子(リンなど)3価の原子(ホウ素など)
不純物の呼び名ドナーアクセプタ
多数キャリア電子正孔
少数キャリア正孔電子

pn接合とダイオード

p形とn形をくっつけたものがpn接合で、これがダイオードです。

p形側にプラス、n形側にマイナスをかける順方向では電流が流れます。逆向きにかける逆方向では、ほとんど流れません。この性質が、交流を直流に直す整流に使われます。

温度が上がると、半導体の抵抗は下がる

金属は温度が上がると抵抗が大きくなりますが、半導体は温度が上がると動ける電荷が増えて、抵抗が小さくなります。金属と反対なので、論説の問題で取り違えないようにしておきましょう。

トランジスタ・FET・オペアンプの計算

トランジスタは電流の関係、オペアンプは抵抗の比

トランジスタは IE = IB + IC と hFE = IC ÷ IB の2つで解けます。オペアンプの増幅度は、外につなぐ抵抗の比で決まります。

『増幅回路の問題は難しそう』と身構えてしまいますよね。ただ、基本の計算は、思っているよりシンプルなんです。

例題:トランジスタの電流

自作の数値で計算してみます。

ベース電流が20μA、電流増幅率hFEが100のトランジスタなら、コレクタ電流は 20μA × 100 で2mAです。エミッタ電流は 2mA + 0.02mA で2.02mAになります。

接地方式の違いも表で

トランジスタの増幅回路は、どの端子を入力と出力で共通にするかで3つの接地方式に分かれます。

接地方式主な特徴
エミッタ接地電流も電圧も増幅でき、よく使われる。入力と出力の向きが反対
ベース接地電流の増幅率は1よりわずかに小さい。電圧は増幅できる
コレクタ接地(エミッタホロワ)電圧の増幅度はほぼ1。入力のインピーダンスが高く、出力が低い

FETは接合形とMOS形

FETには、接合形とMOS形があります。MOS形はゲートが薄い絶縁膜で分けられているので、ゲートにはほとんど電流が流れません。

パワーエレクトロニクスで使われるパワーMOSFETも、このMOS形の仲間です。名前だけでも覚えておくと、機械の科目で出てきた時に戸惑いません。

例題:オペアンプの増幅度

理想のオペアンプでは、2つの入力端子の電圧がほぼ等しくなる(仮想短絡)と考えて解きます。

回路電圧増幅度の式Ri = 10kΩ、Rf = 100kΩの時
反転増幅回路−Rf ÷ Ri−10倍(出力の向きが反対)
非反転増幅回路1 + Rf ÷ Ri11倍

例えば、反転増幅回路に0.1Vを入れると、出力は −1V です。マイナスは、入力と出力の向きが反対になるという意味です。

よくある失敗

非反転増幅回路の増幅度を、反転と同じ Rf ÷ Ri にしてしまうミスがあります。非反転は「1 +」が付くので、回路図で入力がどちらの端子に入っているかを先に確かめましょう。

電子の運動の問題の型を見分ける

電界の中は「まっすぐ加速」、磁界の中は「円を描く」

電子の運動の問題は、電界の中か磁界の中かで型が決まります。電界では F = eE の力で加速し、磁界では F = evB の力で円運動をします。

『電子の運動は、物理の力学みたいで苦手』という方もいるかもしれません。実は、問題の型はそれほど多くないんです。

型電子が受ける力使う式求められやすいもの
電界で加速するF = eEeV = mv² ÷ 2加速後の速さ
電界を横切る電界の向きに eEa = eE ÷ m曲がり方(振れ)
磁界の中を動くF = evB(速さと直角)r = mv ÷(eB)円の半径・周期

電子の電荷の大きさは約1.6 × 10⁻¹⁹ C、質量は約9.1 × 10⁻³¹ kg です。問題文に値が書かれていることが多いので、その値を使いましょう。

電子の運動の問題を、電界で加速する型・電界を横切る型・磁界で円を描く型の3つに分けて比べた図解

例題:100Vで加速した電子の速さ

止まっていた電子を100Vで加速すると、得るエネルギーは eV で 1.6 × 10⁻¹⁹ × 100 から 1.6 × 10⁻¹⁷ J です。

このエネルギーが mv² ÷ 2 になるので、v² = 2 × 1.6 × 10⁻¹⁷ ÷(9.1 × 10⁻³¹)で約3.5 × 10¹³ です。速さは約5.9 × 10⁶ m/s になります。

例題:磁界の中で描く円の半径

さきほどの電子が、磁束密度1 × 10⁻³ Tの磁界に直角に入ったとします。

円の半径は r = mv ÷(eB)で、9.1 × 10⁻³¹ × 5.9 × 10⁶ ÷(1.6 × 10⁻¹⁹ × 1 × 10⁻³)から約0.034m、つまり約3.4cmです。

磁界から受ける力はいつも進む向きと直角なので、電子の速さは変わりません。向きだけが変わり続けて、円を描くんです。

電子の運動の問題を解く手順
  1. 電子がいるのは電界の中か、磁界の中かを見る
  2. 電子が受ける力の式(eE か evB)を書く
  3. 加速ならエネルギーの式、円運動なら半径の式を選ぶ
  4. 電荷と質量の値を入れて、指数の計算を進める

パワーエレクトロニクスとのつながり

電子理論の素子は、機械の科目で「スイッチ」として使われる

理論ではダイオードやトランジスタの性質を学び、機械の科目のパワーエレクトロニクスでは、それらを高速で入り切りして電力を変換します。

『理論の電子理論と、機械のパワエレは別物じゃないの?』と思われがちですよね。

使う素子は同じで、見る角度が違うだけです。理論では1つの素子の性質を、パワエレでは素子を組み合わせた回路で電力をどう変えるかを学びます。

理論で学ぶ素子パワエレでの使われ方つながる回路
ダイオード一方向にだけ流すスイッチ整流回路(交流から直流)
トランジスタ・FET高速で入り切りするスイッチインバータ・チョッパ
pn接合の性質素子が電流を通す条件サイリスタなどの動き
理論の電子理論で学ぶ素子が、機械の科目のパワーエレクトロニクスの整流・インバータ・チョッパにつながることを示した図解

例えば、勉強仲間とこんな会話になることがあります。

「パワエレの整流回路、波形の意味が分からない」

「ダイオードが順方向の時だけ流す、という理論の性質を思い出すと読めるよ」

理論でダイオードの向きの感覚をつかんでおくと、パワエレの波形の問題が読みやすくなるんです。くわしくは電験三種のパワーエレクトロニクスで紹介しています。

電子理論の素子は、計測器の中でも使われています。電子計測とあわせて学ぶなら電験三種の電気計測も読んでみてください。

ひとりで素子の動きがイメージできない時は、図や動画で説明してくれる講座を使う方法もあります。

電験ガイド

独学で進めるか、講座を使うか迷っている方へ

電験三種は4科目の範囲が広く、理論や機械の計算でつまずく人も少なくありません。通信・Web動画・DVD・通学など講座の学び方の違いと、比べる時のチェックポイント、資料請求で確かめたい点をまとめました。

講座の選び方電験三種の講座の選び方を見る

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電子理論でよくある相談

相談が多いのは「パワエレとの関係」と「後回しにしてよいか」

知恵袋には、電子理論を学ぶ意味や、どこまで手を広げるかについての相談が多く見られます。よくあるものを選んで答えます。

相談1:パワエレを理解するには、電子理論が必要?

機械の科目のパワーエレクトロニクスを理解するのに、理論の電子理論を学んでおく必要があるのか、という相談があります。

結論から言うと、ダイオードとトランジスタの性質だけでも先に押さえておくと、パワエレがぐっと楽になります。逆に、パワエレで回路を見てから理論に戻ると、素子の役割がよく分かる、という方もいます。

相談2:電子回路は難しいから、後回しにしてもいい?

電子回路の問題はほかの分野より難しそうなので、後回しにしてもいいか、という相談もよく見かけます。

どの分野をどこまで固めるかは、自分の得点の計画しだいです。ただ、素子の役割の表や電子の運動の型のように、覚える量が少なく手が届く問題もあります。『全部捨てる』と決める前に、基本の型だけは押さえておくと安心ですよ。

相談3:電子の運動で重力を考えないのはなぜ?

電界の中の電子の問題で、重力を足さないのはなぜか、という相談もあります。

電子の質量はとても小さいので、重力は電界から受ける力に比べてほとんど無視できるほど小さくなります。問題文に「重力は無視する」と書かれていることも多いので、まず問題文を確かめてみてください。

相談この記事での答え
パワエレに電子理論は要る?ダイオードとトランジスタの性質を先に押さえると楽
電子回路は後回しでいい?得点の計画しだい。基本の型は押さえておく
重力を考えないのはなぜ?電子が軽く、電界の力に比べて小さすぎるから

よくある質問

電験三種の電子理論では何を学びますか?

半導体の性質、ダイオード・トランジスタ・FET・オペアンプなどの素子の役割と計算、電界や磁界の中の電子の運動などを学びます。

トランジスタとFETの違いは何ですか?

トランジスタはベース電流で電流を操り、FETはゲート電圧で電流を操ります。FETは入力のインピーダンスがとても高いのが特徴です。

オペアンプの増幅度はどう計算しますか?

反転増幅回路は −Rf ÷ Ri、非反転増幅回路は 1 + Rf ÷ Ri です。入力がどちらの端子に入っているかを先に確かめましょう。

n形とp形の半導体はどう覚えればいいですか?

n形は5価の原子を混ぜて電子が多数キャリア、p形は3価の原子を混ぜて正孔が多数キャリアです。nはマイナス(negative)、pはプラス(positive)の電荷が主役、と覚えると混ざりにくくなります。

電子理論はパワーエレクトロニクスとどうつながりますか?

理論で学ぶダイオードやトランジスタを、パワエレでは高速で入り切りするスイッチとして使い、整流やインバータで電力を変換します。

まとめ

この記事の要点
  • 電子理論の素子は、ダイオード・トランジスタ・FET・オペアンプの役割から覚える
  • n形は電子、p形は正孔が多数キャリア
  • トランジスタは IE = IB + IC、オペアンプは抵抗の比で増幅度が決まる
  • 電子の運動は、電界なら加速、磁界なら円運動の型
  • 素子の性質は、機械の科目のパワエレの土台になる

電験の全体像は電験とは?、理論の過去問の進め方は電験3種の理論の過去問の解き方で紹介しています。

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電験ガイド 編集部

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