電験三種の電力|出題範囲と得点しやすい分野の進め方

電験三種の電力の科目を、出題範囲と学ぶ順番の考え方で紹介する記事のアイキャッチ

当サイトの記事は、編集部が電気技術者試験センター・経済産業省などの公的機関と、各講座・出版社の公式サイトの公開情報を調べて独自に執筆しています。試験の日程・受験手数料・合格基準は年度ごとに変わるため、最新の情報は電気技術者試験センターの受験案内で確認してください。

理論の勉強がひと区切りついて、次は電力に進もうと思った時、『範囲が広すぎて、どこから手をつければいいの?』と迷う方も多いですよね。

結論から言うと、電験三種の電力は、分野ごとに「言葉で答える問題」と「計算する問題」を分けてつかむと、勉強の順番が決めやすくなります。

この記事を読むと、電力の出題範囲の全体像と、計算の型、自分に合った学ぶ順番がつかめます。

目次

電験三種の電力はどんな科目?範囲を分野別の表で見る

先に結論

電力の科目は、発電所・蓄電所・変電所の設計と運転、送電線路と配電線路(屋内配線を含む)の設計と運用、電気材料が範囲です。電気を「つくる・変える・送る・配る」までの流れを順に学ぶ科目だと考えると分かりやすいです。

『電力って、発電所の話だけじゃないの?』と思っていた方もいるかもしれません。

実は、発電所から家や工場のそばまで電気が届く道のりの、ほぼ全部が範囲に入っています。試験センターが公表している電力の科目の範囲を、分野ごとにかみくだいて並べてみました。

分野主な中身問題の傾向のつかみ方
水力発電ダム・水車・出力の式・揚水発電計算と仕組みの両方
火力発電ボイラ・タービン・熱サイクル・熱効率仕組みの言葉が多く、熱効率は計算
原子力発電原子炉の種類・核分裂・減速材仕組みの言葉が中心
そのほかの発電太陽光・風力・燃料電池など仕組みと特徴の言葉が中心
変電所・蓄電所変圧器・遮断器・保護リレー・調相設備機器の役割の言葉が多い
送電架空送電線・電圧降下・電力損失・たるみ計算が多い
配電配電方式・電圧降下・力率改善計算と方式の比較
地中電線路ケーブルの種類・布設方式・故障点の探し方言葉と一部の計算
電気材料導電材料・絶縁材料・磁性材料性質の言葉が中心

「傾向のつかみ方」の列は、勉強の手ざわりの目安です。年度によって出方は変わるので、実際の問題で確かめてみてください。

電力の科目の範囲を、つくる(発電)・変える(変電)・送る(送電)・配る(配電)と電気材料の流れで示した図解

試験の形式もおさえておく

電力の試験は90分で、A問題14題とB問題3題です。どの問題も五肢択一で、B問題は1問の中に小問が2つあります。

合格基準は、各科目とも原則100点満点の60点です。令和8年度(2026年度)上期の筆記方式も、4科目とも60点でした。ただ、難易度によって調整されることがあるので、最新は電気技術者試験センターの案内で確かめましょう。

「蓄電所」も範囲に入っている

試験センターが公表している範囲には、発電所・変電所とならんで蓄電所が入っています。大きな蓄電池を並べて、電気をためたり出したりする設備のことです。

古い参考書では、蓄電所の言葉が出てこないこともあります。教材を選ぶ時は、今の範囲に合わせて改訂されているかも見ておくと安心です。

発電の分野は別の記事でくわしく

水力・火力・原子力・再生可能エネルギーの仕組みは、この記事では全体の中の位置づけだけにとどめます。くわしくは電験三種の発電で紹介しています。

暗記と計算の割合はどう考える?問題の型で見分ける

「何問が暗記」ではなく「この問題はどの型か」で考える

電力の科目は、語句や正誤を選ぶ論説の問題と、式を使う計算の問題がまざっています。割合を気にするより、1問ずつ「言葉の問題か、計算の問題か」を見分けられるようにするほうが、勉強の手が動きます。

『電力は暗記科目って聞いたけど、計算もあるの?』という声はよく聞きます。

よく言われるのは「電力は暗記が多めで、計算は送配電に集まりやすい」という話です。ただ、毎回の出方は変わるので、この記事では割合を決めつけず、問題の型で分けて見ていきます。

問題の型どんな問題か例勉強のしかた
語句の穴埋め文章の空欄に入る言葉を選ぶ火力のサイクルの名前、機器の名前図と一緒に言葉を覚える
正誤の判断正しい(誤っている)ものを選ぶ発電方式の特徴、材料の性質「なぜそうなるか」まで読む
式に当てはめる計算決まった式に数値を入れる水力の出力、たるみ式と単位をセットで覚える
回路を組む計算図を描いてから解く電圧降下、短絡電流、力率改善理論の考え方で解く

例えば、火力発電の問題でも、熱サイクルの名前を選ぶなら語句の型、熱効率を出すなら計算の型です。同じ分野でも型が変わるので、分野と型の両方で見ておくと迷いません。

論説の問題は「言いかえ」に強くなる

正誤の問題は、テキストと同じ言葉で出るとは限りません。「なぜそうなるか」を自分の言葉で言えるようにしておくと、言いかえられた選択肢にも対応しやすくなります。

論説の問題の覚え方

論説の問題は、言葉を丸暗記するより、仕組みの図とセットで覚えるのがコツです。

例えば火力発電なら、ボイラで水を蒸気に変え、タービンを回し、復水器で水に戻す、という流れを図で描けるようにします。流れが頭に入っていれば、「どの機器の説明か」を問われた時に、図の中の位置から思い出せるんです。

電力でよく使う計算の型と例題

計算は「式を知っている」より「どの式を使うか決められる」が大事

電力の計算の型は、水力の出力、火力の熱効率、送配電の電圧降下と電力損失、短絡電流、電線のたるみなどです。どれも式は短いので、問題文から型を見分けられるかが勝負です。

『計算問題は、理論より楽なの?』と気になる方もいますよね。

電力の計算は、理論の計算を実際の設備に当てはめたものが多いです。式そのものは短いので、型を覚えてしまえば、理論より手早く解ける問題もあります。

計算の型代表的な式問題文の手がかり
水力の出力P = 9.8QHη〔kW〕流量・有効落差・効率
火力の熱効率η = 3,600P ÷(BH)燃料の量・発熱量・出力
三相の電圧降下v ≒ √3 I(R cosθ + X sinθ)線路の抵抗・リアクタンス・力率
三相の電力損失3I²R1線あたりの抵抗・電流
短絡電流Is = In × 100 ÷ %Z百分率インピーダンス・基準容量
電線のたるみD = WS² ÷(8T)径間・水平張力・電線の重さ

例題1:水力発電の出力

自作の数値で計算してみます。

『流量20m³/s、有効落差100m、水車と発電機を合わせた効率0.85の水力発電所の出力は?』

P = 9.8 × 20 × 100 × 0.85 で、16,660kWです。9.8は重力加速度で、水1m³の重さ(1,000kg)と単位の換算をまとめると、この式の形になります。

例題2:火力発電の熱効率

『出力100,000kWで運転し、1時間に発熱量44,000kJ/kgの燃料を20,000kg使う火力発電所の熱効率は?』

1kW・hは3,600kJなので、1時間の出力は 3,600 × 100,000 で3.6 × 10⁸ kJです。燃料の熱量は 20,000 × 44,000 で8.8 × 10⁸ kJなので、熱効率は約40.9%になります。

例題3:三相3線式の電圧降下と電力損失

『1線あたりの抵抗0.5Ω、リアクタンス0.4Ωの三相3線式の線路に、力率0.8(遅れ)で100Aが流れている。電圧降下と電力損失は?』

例題3の解き方
  1. sinθを出す:cosθ = 0.8 なので sinθ = 0.6
  2. かっこの中を出す:0.5 × 0.8 + 0.4 × 0.6 で0.64
  3. 電圧降下:√3 × 100 × 0.64 で約111V
  4. 電力損失:3 × 100² × 0.5 で15,000W(15kW)

√3が付くのは、線間電圧で答えるからです。三相の√3の関係は、理論の電験三種の三相交流で学ぶ内容そのものなんです。

例題4:短絡電流と電線のたるみ

『基準容量10MV・A、電圧6.6kVで、短絡点までの百分率インピーダンスが10%の時、三相短絡電流は?』

基準電流は 10,000,000 ÷(√3 × 6,600)で約875Aです。短絡電流は 875 × 100 ÷ 10 で、約8,750Aになります。

たるみの例も見ておきます。電線の重さ20N/m、径間200m、水平張力20,000Nなら、D = 20 × 200² ÷(8 × 20,000)で5mです。

例題5:地中ケーブルの充電電流

『1線あたりの静電容量2μF、線間電圧6.6kV、周波数50Hzの三相の地中ケーブルの充電電流は?』

充電電流は、相電圧Eに対して I = 2πfCE で出します。相電圧は 6,600 ÷ √3 で約3,810Vなので、I = 2π × 50 × 2 × 10⁻⁶ × 3,810 で約2.4Aです。

『線間電圧のまま入れてしまった』というミスが多いので、√3で割って相電圧にしてから式に入れましょう。

B問題は(a)と(b)のつながりを見る

B問題は、1問の中に小問(a)と(b)があります。(a)で出した値を(b)で使う形の問題もあるので、(a)を落ち着いて解くことが(b)の得点にもつながります。

例えば(a)で電流を出し、(b)でその電流を使って電圧降下や損失を出す、という流れです。(a)の答えに自信がない時も、(b)の式の立て方だけは確かめてみてください。

よくある失敗

単位の取り違えがいちばん多い失敗です。kVとV、MV・AとV・A、kJとkW・hなど、式に入れる前に単位をそろえる習慣をつけておきましょう。

自分に合った学ぶ順番を判定する

理論の進み具合で、入り口を変える

理論が固まっている方は計算の多い送配電から、理論と並行する方は言葉の多い発電から入ると、手が止まりにくくなります。

『結局、電力はどこから始めればいいの?』と迷いますよね。

決まった正解はありませんが、今の自分の状況で入り口を選ぶと、ムダな行き来が減ります。

今の状況おすすめの入り口そのあとの順番の例
理論の勉強が終わった・科目合格した送電・配電(計算)変電所、発電、電気材料
理論と同時に進めている発電(仕組みの言葉)変電所、電気材料、送配電
電気の現場で働いている変電所・配電(見たことがある設備)送電、発電、電気材料
電気の勉強が初めて発電(イメージしやすい)変電所、送配電、電気材料
今の状況から、電力の科目の入り口を発電・送配電・変電所のどれにするか判定する手順の図解

例えば、仕事のあと平日に1時間、土日に3時間とれる方なら、平日は発電や材料の言葉を少しずつ覚え、土日に送配電の計算をまとめて解く、という組み方もできます。

科目合格制度を使って、年ごとに受ける科目を分ける方もいます。科目の取り方の作戦は電験三種の科目合格制度で紹介しています。

電気材料はすき間時間に

電気材料は、導電材料・絶縁材料・磁性材料の性質を覚える分野です。計算はほとんどないので、通勤中や昼休みなど、すき間時間に表を見返す使い方が向いています。

例えば、銅とアルミの電線の違いや、変圧器の鉄心に使う材料の性質などを、表にまとめて少しずつ覚えていくと、まとまった時間を計算に回せます。

材料の分け方主な役割覚える時の観点
導電材料電気をよく通す(電線など)抵抗率・重さ・強さ
絶縁材料電気を通さない(ケーブルの被覆・がいしなど)熱への強さ・劣化のしかた
磁性材料磁束を通しやすい(変圧器の鉄心など)透磁率・鉄損の少なさ

『材料は地味で後回しにしがち』という方も、表の3つの分け方だけ先に頭に入れておくと、一つひとつの材料の話が頭に入りやすくなりますよ。

変電所と送配電はつなげて学ぶ

変電所は、送電と配電のあいだで電圧を変える場所です。送配電の計算をする時も、変電所の変圧器や調相設備の役割が分かっていると、問題の場面がイメージしやすくなります。

変電所の機器と保護は電験三種の変電所、送配電の計算は電験三種の送電・配電でくわしく紹介しています。

理論とつながる所をチェックする

電力の計算は、理論の延長

三相交流、力率、電磁誘導、直流回路の考え方は、電力の科目でそのまま使います。理論で手薄な所があれば、電力の計算でつまずく原因になります。

『理論と電力は別の科目だから、切り離して勉強していい?』と思う方もいるかもしれません。

実は、電力の計算問題の多くは、理論で学んだ考え方を設備に当てはめたものなんです。次の表とチェックで、理論の手薄な所がないか確かめてみてください。

電力の場面使う理論の考え方
三相の電圧降下・電力損失三相交流の√3の関係、線電流と相電流
力率改善・調相設備有効電力・無効電力・皮相電力の三角形
発電機・変圧器の仕組み電磁誘導
短絡電流オームの法則、百分率インピーダンス
地中ケーブルの充電電流コンデンサと静電容量
電力に進む前の理論のチェック
  • 三相の線間電圧と相電圧、線電流と相電流の関係を言えるか
  • P・Q・Sの直角三角形を描いて、力率を出せるか
  • ベクトル図で、電流が電圧より遅れるか進むかを描けるか
  • コンデンサに流れる電流を、電圧と周波数から出せるか
  • オームの法則で、電流・電圧・抵抗を行き来できるか

当てはまらない項目があれば、先に理論に戻るほうが近道です。理論の進め方は電験三種の理論で紹介しています。

例えば、勉強仲間とこんな会話になることがあります。

「力率改善の問題、コンデンサの容量がどうしても出せない」

「理論のP・Q・Sの三角形を描いてみて。無効電力を減らすぶんがコンデンサだよ」

理論の図にいったん戻るだけで、電力の問題がすっと解けることは多いんです。

力率改善の考え方を数字で

有効電力400kW、力率0.8(遅れ)の負荷があるとします。皮相電力は 400 ÷ 0.8 で500kV・A、無効電力は300kvarです。

力率を1にしたいなら、300kvarのコンデンサで無効電力を打ち消します。皮相電力は400kV・Aに下がり、同じ電圧なら電流は5分の4になります。

ひとりで範囲の広い電力を進めるのが不安な方は、分野の順番まで組まれた講座を使うのもひとつの方法です。

電験ガイド

独学で進めるか、講座を使うか迷っている方へ

電験三種は4科目の範囲が広く、理論や機械の計算でつまずく人も少なくありません。通信・Web動画・DVD・通学など講座の学び方の違いと、比べる時のチェックポイント、資料請求で確かめたい点をまとめました。

講座の選び方電験三種の講座の選び方を見る

当サイト内の解説ページに移動します。試験の日程・受験手数料は電気技術者試験センターの案内で最新情報を確認してください。

電力の勉強でよくある相談

相談が多いのは「理論のあとの進め方」と「水力の計算」

知恵袋には、理論のあとに電力・機械・法規をどう進めるかや、水力発電の計算問題の解き方についての相談が多く見られます。よくあるものを選んで答えます。

相談1:理論のあと、電力・機械・法規はどう進める?

理論に絞って勉強し、CBT方式で手ごたえがあったので、次の電力・機械・法規の勉強方法を知りたい、という相談があります。

結論から言うと、理論の力が残っているうちに、計算の多い送配電から入るのがひとつの手です。三相や力率の考え方が新鮮なうちに使うと、電力の計算がぐっと楽になります。

『3科目を一度に…』と焦る必要はありません。科目合格の免除を使い、次の回で電力と法規、その次で機械、というように分けて受ける方もいます。三種の科目合格は、申請すれば最大で連続5回まで免除されます。

相談2:水力発電の計算問題が解けない

電力の水力発電の問題の答えを教えてほしい、という相談が、知恵袋にはとてもたくさん寄せられています。

水力の計算は、P = 9.8QHη の式が出発点です。問題文から、流量Q、有効落差H、効率ηの3つを探し出してみてください。

『有効落差と総落差、どっちを使うの?』と迷ったら、損失落差を引いた有効落差を使います。流量が「1日の量」で与えられている時は、1秒あたりに直してから式に入れましょう。

相談3:電圧を上げると電力損失が減るのはなぜ?

同じ負荷に同じ電力を送る時、送電の電圧を上げると電力損失がどう変わるのか、という相談もあります。

同じ電力・同じ力率なら、電圧を2倍にすると電流は2分の1になります。電力損失は電流の2乗に比例するので、4分の1に減ります。電力損失は電圧の2乗に反比例する、と覚えておくと便利です。

相談この記事での答え
理論のあとの進め方計算の多い送配電から入るのがひとつの手
水力の計算が解けないP = 9.8QHη のQ・H・ηを問題文から探す
電圧と電力損失の関係損失は電圧の2乗に反比例する

よくある質問

電験三種の電力の範囲はどこまでですか?

発電所・蓄電所・変電所の設計と運転、送電線路と配電線路(屋内配線を含む)の設計と運用、電気材料です。電気をつくってから配るまでの流れが範囲になっています。

電力は暗記と計算のどちらが中心ですか?

両方がまざっています。割合を気にするより、1問ずつ「言葉の問題か計算の問題か」を見分けられるようにすると、勉強の手が動きやすくなります。

電力の科目はどこから勉強すればいいですか?

理論が終わっている方は計算の多い送配電から、理論と並行する方は言葉の多い発電から入ると進めやすいです。今の状況に合わせて入り口を選んでみてください。

電力の試験時間と問題数は?

試験時間は90分で、A問題14題とB問題3題です。各問題とも五肢択一で、B問題は1問に小問が2つあります。

電力の計算で理論の知識は必要ですか?

必要です。三相交流、力率、電磁誘導、コンデンサの考え方は、電力の計算でそのまま使います。

まとめ

この記事の要点
  • 電力の範囲は、発電・変電・送配電・電気材料の流れ
  • 問題は「言葉の型」と「計算の型」で見分ける
  • 計算は水力・熱効率・電圧降下・損失・短絡電流・たるみが代表
  • 入り口は、理論の進み具合で発電か送配電かを選ぶ
  • 三相・力率・電磁誘導など、理論とのつながりを先に確かめる

電験の全体像は電験とは?で紹介しています。

電験ガイド

電験ガイド 編集部

電験(電気主任技術者試験)の一種・二種・三種について、試験の仕組み・科目別の要点・勉強の進め方・講座の選び方・資格を活かす仕事までを、受験する人の目線で整理している情報サイトです。 公式サイト

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