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直流回路はなんとか解けるようになったのに、交流回路に入ったとたん『ベクトル?位相?急に分からなくなった』と感じている方も多いですよね。
結論から言うと、電験三種の交流回路は、抵抗・コイル・コンデンサが「電流をどれだけ遅らせるか、進めるか」をつかめば、あとは直流回路と同じ考え方で解けます。
この記事を読むと、交流回路のインピーダンス・ベクトル・電力の考え方を、例題を通して順につかめます。
交流回路で最初に押さえる3つの部品の振る舞い
交流回路では、抵抗は電流と電圧の向きがそろい、コイルは電流が電圧より90度遅れ、コンデンサは電流が90度進みます。この3つの違いが、交流回路のすべての出発点です。
『そもそも、直流と交流で何が違うの?』というところから気になりますよね。
交流は、電圧と電流の向きと大きさが、時間とともに波のように変わります。そのため、電圧と電流の波の「タイミングのずれ(位相差)」を考える必要があるんです。
| 部品 | 交流での抵抗の役割 | 式 | 電流と電圧の関係 | 周波数を上げると |
|---|---|---|---|---|
| 抵抗R | 抵抗 | R | 同じタイミング(同相) | 変わらない |
| コイルL | 誘導性リアクタンス | XL = 2πfL | 電流が90度遅れる | XLが大きくなる |
| コンデンサC | 容量性リアクタンス | XC = 1 ÷(2πfC) | 電流が90度進む | XCが小さくなる |
例えば、コイルは周波数が高いほど電流を通しにくく、コンデンサは周波数が高いほど電流を通しやすくなります。この反対の性質が、あとで出てくる共振につながります。
リアクタンスを数字で出してみる
式だけだとイメージしにくいので、自作の数値で計算してみます。
50Hzの交流で、0.1Hのコイルなら XL = 2π×50×0.1 で約31.4Ωです。同じ50Hzで100μFのコンデンサなら、XC = 1÷(2π×50×0.0001)で約31.8Ωになります。
周波数を60Hzに上げると、コイルのXLは約37.7Ωに増え、コンデンサのXCは約26.5Ωに減ります。表の「周波数を上げると」の列のとおりですね。
計算には実効値を使う
交流の電圧や電流は、ふつう実効値で表します。実効値は、同じ抵抗で同じ熱を出す直流の値に当たるものです。
正弦波なら、実効値は最大値÷√2です。例えば最大値が141Vの交流なら、実効値は約100Vになります。家庭のコンセントが「100V」と言われるのも実効値なんです。
特に断りがなければ、電験の問題の電圧や電流は実効値として扱います。「最大値」と書かれている時だけ、√2で割って実効値に直してから計算しましょう。
ベクトル図の描き方の手順
ベクトル図は、回路のすべての部品に共通する量を基準(横向きの矢印)にして描きます。直列なら電流、並列なら電圧が共通です。
『ベクトル図って、どこから描き始めればいいの?』という声は本当によく聞きます。
ベクトル図は、大きさと向き(位相)を矢印で表した図です。手順を決めておけば、毎回同じ流れで描けます。
- 直列か並列かを見て、基準にする量を決める(直列は電流、並列は電圧)
- 基準の量を、右向きの横の矢印で描く
- 抵抗の分は、基準と同じ向きに描く
- コイルの分は、直列なら電圧を上向き、並列なら電流を下向きに描く
- コンデンサの分は、コイルと反対の向きに描く
- 矢印をつないで、合成した矢印の長さと角度を出す

直列回路のベクトル図
RLの直列回路なら、共通の電流Iを横に描きます。抵抗の電圧VRは横向き、コイルの電圧VLは上向きです。
全体の電圧Vは、VRとVLを2辺とする直角三角形の斜辺になります。だから V = √(VR² + VL²) と、三平方の定理で出せるんです。
並列回路のベクトル図
RLの並列回路なら、共通の電圧Vを横に描きます。抵抗の電流IRは横向き、コイルの電流ILは下向きです。
全体の電流Iは、IRとILを2辺とする直角三角形の斜辺です。例えば、120Vの電源に15Ωの抵抗と20Ωのコイル(リアクタンス)を並列につなぐと、IRは8A、ILは6Aです。全体の電流は√(8² + 6²)で10Aになります。
並列回路の電流を、IRとILをそのまま足して14Aとしてしまう方がいます。交流では向きの違う矢印なので、足すのは三平方の定理で、です。
RC直列のベクトル図も同じ流れ
コンデンサが入ったRC直列回路も、描き方の流れは同じです。違うのは、コンデンサの電圧を下向きに描くところだけです。
例えば、R=4Ω、XC=3Ωの直列に50Vをかけると、インピーダンスは√(4² + 3²)で5Ω、電流は10Aです。コンデンサがあるので、電流は電圧より進んでいます。
インピーダンスを計算する
直列回路のインピーダンスは Z = √(R² +(XL − XC)²) です。コイルとコンデンサは向きが反対なので、差をとってから三平方の定理を使います。
『インピーダンスとリアクタンス、何が違うの?』と混乱しやすいところですよね。
リアクタンスはコイルやコンデンサの「電流の通しにくさ」で、インピーダンスは抵抗とリアクタンスを合わせた回路全体の通しにくさです。単位はどれもΩです。
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 抵抗 | R | 電流と同じ向きの通しにくさ |
| リアクタンス | X(XL、XC) | 電流を遅らせたり進めたりする通しにくさ |
| インピーダンス | Z | 抵抗とリアクタンスを合わせた全体の通しにくさ |
例題:RLC直列回路
自作の例題で、インピーダンスから電流までの流れを確かめます。
『R=8Ω、XL=10Ω、XC=4Ωの直列回路に100Vの交流電圧をかけた。電流は?』
- リアクタンスの差をとる:10 − 4 で6Ω(コイルの性質が残る)
- インピーダンスを出す:√(8² + 6²)で10Ω
- オームの法則:100÷10で10A
電流は10Aです。XLのほうが大きいので、電流は電圧より遅れています。
直流回路で覚えた「合成してからオームの法則」の流れが、そのまま使えていますね。直流回路のおさらいは電験三種の直流回路でできます。
並列回路は電流から全体のインピーダンスを出す
並列回路のインピーダンスは、電流を先に出してから求めると簡単です。
先ほどの並列の例なら、120Vで全体の電流が10Aなので、インピーダンスは120÷10で12Ωです。15Ωと20Ωをそのまま並列の式に入れた約8.6Ωとは違う値になる点に気をつけましょう。
複素数で書くと計算が楽になる
インピーダンスは、Z = R + jX のように複素数で書くこともあります。jは「90度回す」という意味の記号だと考えると分かりやすいです。
例えば上の例題なら、Z = 8 + j6 です。直列はそのまま足し算、並列は直流の並列と同じ形の式で計算できるので、回路が複雑な時に役立ちます。
有効電力・無効電力・皮相電力・力率の関係
有効電力P、無効電力Q、皮相電力Sは、S² = P² + Q² の直角三角形になります。力率は cosθ = P÷S です。
『電力が3種類もあって、どれを使えばいいか分からない』という方も多いはずです。
交流では、抵抗で実際に使われる電力と、コイルやコンデンサとの間を行ったり来たりするだけの電力を分けて考えます。
| 電力 | 記号 | 式 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| 有効電力 | P | VI cosθ = I²R | W | 抵抗で実際に使われる電力 |
| 無効電力 | Q | VI sinθ = I²X | var | コイル・コンデンサとの間を行き来する電力 |
| 皮相電力 | S | VI | V·A | 電圧と電流の大きさを掛けたもの |
| 力率 | cosθ | P ÷ S = R ÷ Z | なし | 皮相電力のうち有効に使われる割合 |
先ほどの例題で確かめると、電流10A、R=8Ωなので、有効電力は10×10×8で800Wです。無効電力は10×10×6で600var、皮相電力は100×10で1,000V·Aになります。
800² + 600² = 1,000² が成り立っていて、力率は800÷1,000で0.8です。R÷Zでも8÷10で0.8になり、同じ値が出ますね。

力率は電力の科目でもよく使う
力率の考え方は、電力の科目の力率改善や、法規の計算でも使います。
例えば、コンデンサをつないで無効電力を打ち消すと、同じ有効電力でも皮相電力が小さくなり、電流が減ります。理論で直角三角形の関係をつかんでおくと、ほかの科目の計算が楽になります。
力率改善を数字で見る
先ほどの例題の回路(有効電力800W、無効電力600var、電圧100V)に、600varぶんのコンデンサを並列につないだとします。
コイルの無効電力とコンデンサの無効電力が打ち消し合い、無効電力は0になります。皮相電力は800V·Aに下がり、電源からの電流は1,000÷100の10Aから、800÷100の8Aに減ります。
『同じ仕事をするのに電流が減るの?』と不思議に感じますよね。有効電力は800Wのまま、行き来するだけの電力がなくなったぶん、電線に流れる電流が少なくて済むんです。
共振の問題の型と見分け方
直列でも並列でも、コイルとコンデンサのリアクタンスが等しくなる時が共振です。共振する周波数は f = 1 ÷(2π√(LC))で出せます。
『共振って、何が起きているの?』と思いますよね。
共振の時は、コイルとコンデンサの効果が打ち消し合います。直列か並列かで、起きることが反対になるので、表で見比べてみてください。
| 比べるところ | 直列共振 | 並列共振 |
|---|---|---|
| 条件 | XL = XC | XL = XC |
| インピーダンス | いちばん小さく、Rだけになる | いちばん大きくなる |
| 電源からの電流 | いちばん大きい | いちばん小さい |
| 力率 | 1 | 1 |
| 問題文の手がかり | 電流が最大になる周波数 | 電流が最小になる周波数 |
例えば、問題文に「電流が最大となる」とあって、RLCが直列なら直列共振の型だと見当がつきます。XL = XC の式を立てれば、周波数やLやCの値が出せます。

- 問題文に「最大」「最小」「力率が1」の言葉があるか
- コイルとコンデンサの両方がある回路か
- 部品が直列か並列か
- 周波数・L・Cのどれを求めるのか
周波数を変えると共振する例
自作の例で、周波数を変えた時の動きを見てみます。
ある周波数で XL = 20Ω、XC = 5Ω の直列回路があるとします。周波数を半分にすると、XLは10Ωに減り、XCは10Ωに増えて、ちょうど XL = XC になります。
XLは周波数に比例し、XCは周波数に反比例するので、途中のどこかで等しくなる点がある、というわけです。
共振の式を覚えるコツ
共振の周波数の式は、XL = XC から自分で導けます。
2πfL = 1 ÷(2πfC)を f について解くと、f² = 1 ÷(4π²LC)となり、f = 1 ÷(2π√(LC))です。式そのものを丸暗記するより、XL = XC から出せるようにしておくと忘れにくいですよ。
交流回路は、三相交流の土台にもなります。三相の計算は電験三種の三相交流で紹介しています。
交流回路の勉強の進め方
交流回路は、部品の振る舞い、ベクトル図、インピーダンス、電力、共振の順に積み上げると、前の知識を使いながら進められます。
『どこから手をつければいいの?』という方のために、学ぶ順番の目安をまとめました。
| 順番 | 学ぶこと | できるようになりたいこと |
|---|---|---|
| 1 | R・L・Cの振る舞い | 電流が遅れるか進むかを言える |
| 2 | 実効値 | 最大値と実効値を行き来できる |
| 3 | ベクトル図 | 直列と並列で基準を決めて描ける |
| 4 | インピーダンス | RLC直列の電流を出せる |
| 5 | 電力と力率 | P・Q・Sと力率を出せる |
| 6 | 共振 | 直列と並列の共振を見分けられる |
例えば、平日はテキストで1つずつ進め、土日に過去問の交流回路の問題だけを集めて解く、という組み方もできます。理論全体の順番は電験三種の理論で紹介しています。
過去問で交流回路を解く時のコツ
過去問の交流回路の問題は、解き始める前に回路の情報を整理するだけで、ぐっと解きやすくなります。
- 部品が直列か並列かを見て、ベクトル図の基準を決めたか
- 与えられた値が最大値か実効値かを確かめたか
- リアクタンスが与えられているか、LやCと周波数から出すのかを見たか
- 求めるのが電流・電力・力率・周波数のどれかを確かめたか
例えば「電流が最大となる」とあれば共振、「力率」とあれば電力の三角形、というように、問題文の言葉からどの節の知識を使うかを決めておきましょう。
交流回路でつまずいた時は
『ベクトルがどうしても頭に入らない』という時は、ひとりで抱え込まないことも大事です。
図を動かしながら説明してくれる動画や、質問できる講座を使う人もいます。学び方の形を比べてから選んでみてください。
電験ガイド
独学で進めるか、講座を使うか迷っている方へ
電験三種は4科目の範囲が広く、理論や機械の計算でつまずく人も少なくありません。通信・Web動画・DVD・通学など講座の学び方の違いと、比べる時のチェックポイント、資料請求で確かめたい点をまとめました。
講座の選び方電験三種の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。試験の日程・受験手数料は電気技術者試験センターの案内で最新情報を確認してください。
交流回路についてよくある相談
知恵袋でも、交流回路についての相談がたくさん寄せられています。よくあるものを選んで答えます。
相談1:消費電力の計算で、なぜ力率を掛けないの?
交流回路の問題で、消費電力を計算する時に力率のcosθを掛けていないのはなぜか、という相談があります。
結論から言うと、P = I²R の式を使っているからです。抵抗Rに流れる電流で計算すれば、それがそのまま有効電力になります。
P = VI cosθ も P = I²R も、同じ有効電力を別の道すじで出しているだけなんです。コイルだけの回路なら、Rが0なので有効電力も0になります。
相談2:なぜ最大値でなく実効値を使うの?
交流回路で、どうして最大値ではなく実効値を使うのか、という相談もよく見かけます。
実効値を使うと、直流と同じ式で電力を計算できるからです。例えば実効値100Vを10Ωの抵抗にかけると、電力は100×100÷10で1,000Wと、直流と同じ形で出せます。
相談3:文系だと交流回路は厳しい?
数学の入門書を読んでいたら、交流回路のあたりから分からなくなった、文系だと厳しいのか、という相談もあります。
交流回路で使う数学は、三角比(sin・cos)と三平方の定理、それに√の計算が中心です。直角三角形の辺の長さと角度の関係がつかめれば、かなりの問題に手が届きます。
『自分には無理かも』と思ったら、まず直角三角形の練習問題に戻ってみてください。そこが分かると、ベクトル図がぐっと身近になります。
相談4:RLC直列のベクトル図が、本によって形が違う
RLC直列回路のベクトル図で、上向きに描いた図と下向きに描いた図があり、同じ意味なのか分からない、という相談もあります。
コイルの電圧とコンデンサの電圧は向きが反対なので、どちらが大きいかで、合成した電圧が上向きにも下向きにもなります。XLが大きければ上向き、XCが大きければ下向きです。
形が違って見えても、基準の電流の向きと、コイルとコンデンサの差を見れば、同じルールで描かれていると分かりますよ。
| 相談 | この記事での答え |
|---|---|
| なぜ力率を掛けない? | P = I²R で出しているから |
| なぜ実効値を使う? | 直流と同じ式で電力が出せるから |
| 文系だと厳しい? | 三角比と三平方の定理に戻れば進められる |
| ベクトル図の形が違う | XLとXCのどちらが大きいかで向きが変わる |
よくある質問
電験三種の交流回路で最初に覚えることは何ですか?
抵抗・コイル・コンデンサで、電流が電圧に対して同じタイミングか、遅れるか、進むかです。ここからベクトル図とインピーダンスへ進みます。
インピーダンスはどう計算しますか?
直列回路なら Z = √(R² +(XL − XC)²) で計算します。コイルとコンデンサのリアクタンスの差をとってから、三平方の定理を使います。
有効電力と皮相電力の違いは何ですか?
有効電力は抵抗で実際に使われる電力で、単位はWです。皮相電力は電圧と電流の大きさを掛けたもので、単位はV·Aです。
共振はどんな時に起きますか?
コイルとコンデンサのリアクタンスが等しくなる時です。直列共振では電流がいちばん大きく、並列共振ではいちばん小さくなります。
交流回路の計算に複素数は必要ですか?
基本の問題はベクトル図と三平方の定理で解けます。ただ、回路が複雑になると複素数で計算したほうが楽な場面もあるので、慣れてきたら取り入れてみてください。
まとめ
- 抵抗は同相、コイルは電流が遅れ、コンデンサは電流が進む
- ベクトル図は、直列は電流、並列は電圧を基準に描く
- インピーダンスはリアクタンスの差をとってから三平方の定理で出す
- 有効電力・無効電力・皮相電力は直角三角形の関係
- 共振は XL = XC の時で、直列と並列で起きることが反対
電験の全体像は電験とは?、年度別の過去問の進め方は電験3種の理論の過去問の解き方で紹介しています。





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